Vol.73
河野 正志

消しゴム付きのPB100
PowerBook100

自分は浮気性だと思う。マックに出会う前も4台のパソコンに手を染めた。一番初めは、もう20年以上前のことだが、社内で何人かの手を経たNEC PC8001。雑誌を読みながらBASICの基本を学んだ。次に買ったのは鳴り物入りで登場したIBM JXという機種。簡単なゲームを自作し楽しく使っていたが、あっという間に生産中止になった。仕方なくその当時の標準機だったPC98に乗り換えると同時に世にCGブームが来た。16色しか表示できないマシンにフルカラーが出せるフレームバッファとソフトを買い込み自宅でレートレーシングCGを作った。もう一台はPC98のノートタイプ。MIDI音源を追加しギターをシミュレートしたが、微妙に音の時間差をつけないとギターらしく聞こえないことが分かって呆然とした。結構まじめなPCユーザーだったが、このころからソフトを切り替えるたびにconfig.sysを書き換えなければならないMS-DOSの世界に矛盾を感じていた。「誰が考えたんや!こんなもん」と叫ぶことも何度かあった。
そんなときに出会ったのがPowerBook100。パワースイッチがないのに驚き、トラックボールの使いやすさに感心したが、何よりユーザーに負担をかけないその設計ポリシーに感銘を覚えた。このPowerBook100は仕事に革命をもたらした。当時会社ではパソコンは技術部門で専門的なことにしか使われてなかったが、報道局の選挙本部で大量の得票データの整理や分析にエクセルとの組み合わせで大きな力を発揮した。しかし悲しいかな、あっという間にHD容量が不足した。そこでハードディスクを自分で換装したのはよかったが、厚みが合わずキーボードがほんの僅か持ち上がってしまい、ディスプレーを閉めるとキーボードが押されてリスタートする無限ループに陥ってしまった。困った挙句にディスプレーの両端に小さく切った消しゴムを貼りつけたが、なんとも格好悪かった。
このPowerBook100を契機にマック道を一直線に走ることになった。以降Duo210、PowerBook165C、PowerMac6100AV、PowerBook540C、PowerMac8500、PowerBook 3400C、iMac Rev.A、iBook、PowerMacG4/500、iBook Dual USB と使ってきた。白状すると、途中で浮気してWinノートも1台買ったが結局使う気にならず、いつの間にか小学生の娘の遊び道具と化した。
思い出深いのはPM8500とPB3400C。8500はあのすっきりしたタワー型のデザインが大いに気に入って今も現役使用している。ただしCPUをG4に強化しハードディスクもATA66の40ギガを追加した。使い道はSCSI接続の周辺機器のドライブがメインで、年に一度は家族が前に座って年賀状作りを行っている。年賀状で一番大切なのは美しい宛名印刷だと思っている。プリンタは7〜8年前に「スキャプリ」の名で売り出したアルプス電子のMD4000だが、まるで墨で書いたような真っ黒な文字が他のプリンタには真似の出来ないところで、手放すことが出来ない。
PB3400Cは東京秋葉原の裏通りの店で50万円程度まで下がったのを購入したもの。世間は小型の2400をもて囃していたが、イーサネットを装備しない2400はビジネスには不向きで眼中になかった。ファイルメーカーとの組み合わせで、番組の制作費伝票のDBを作ったり、番組のニュース項目表システムを作ったりした。自画自賛だが、このニュース項目表は大変よく出来ていて、何千万円もかけた会社のシステムより余程使いよかった。
ネットサーフィンにも飽きた最近の楽しみは専らフライトシミュレータだ。パロアルトのアップルストアで買ったFly!IIというソフトが面白くてたまらない。単に飛行機を離着陸させるのではなく、世界中の行ったこともない空港にナビゲーションに従って飛んでゆく。分厚い雲をついて降下し目の前が開けたとたん、真正面に目的の滑走路が現れた時の快感はゲームであることを忘れさせてくれる。フライトシミュレータといえばマイクロソフトのものが有名だが、あれも元はといえばマック用のソフト。マックのいいところは、ほんの少しの想像力を働かせるだけで、ほとんどのソフトがマニュアルを読まずに使えるところだ。Fly!IIにも300ページにも及ぶ英語のマニュアルがついているが、あまりお世話になったことはない。
時々「まだマックを使ってるの?」なんて聞いてくる輩がいる。しかしそんなやつに限って実はマックが気になっていることが最近分かった。先日そんな一人が「今マックのノートを買うなら何がいいかな?」と猫撫で声で擦り寄ってきた。「娘に買ってやろうと思って」なんて言い訳がましく言っていたが、結局人は皆浮気性で自分には嘘をつけない生き物のようだ。使い道を聞いたうえでPowerBookG4の12インチを勧めた。40ギガもあれば自分でハードディスクを換装する必要はもはやないだろう。

(河野 正志)

読売テレビ報道局の河野部長です。
マックなイベントで、必ずおあいする河野部長、いつもタメで口聞いてすいません。実はすごーく偉い人なんですよね、、
今回はありがとうございます。

(MacTreeProject)

河野 正志
Tadashi Kono


1956年大阪生まれ。読売テレビ報道局局長補佐兼報道番組部長。土曜朝の報道番組「ウェークアップ!」を担当。東高西低の視聴率に悩む。同志社大学文学部英文学科卒業。

MacTreeProject・2003/08/01
林檎いとしや目次へMacTreeへ