Vol.72
矢野孝一

So Far /HyperCard
HyperCard

 我々の会社は、皆さんには「周辺装置/記憶装置の」会社として知って頂いている方もあるかと思います。 この業界で仕事を始めた19年前は、実は教育関連のソフト開発を行うつもりでした。しかし、当時はまだ余りPCも一般には認知されていなかった事もあり、事業としては難しかった。そうしている内に、たまたま自分達用に作ったハードディスクが評価を頂いて、販売をする事になっていったのです。
 さて、今回頂いたテーマは、「私にとっての一番思い出深いアップル製品は」という事ですので、それについてお話ししたいと思います。

■私にとってMacは、まさに『子供たち(自分の可能性を探している全ての人)にとっての魔法の箱』のように感じました。 その意識は、HyperCardが現れてさらに強くなりました。
 これを読んでおられる皆さんも、少なからず「ゆめ」を感じさせる魅力がMacにはある(あった?)と信じておられると思いますが、如何でしょうか? 小さな箱に無限の可能性を感じた方は、少なくなかったのではないでしょうか。
 私は、Macとの最初の接点が「子供が使いたくなる」道具だという印象を持っていました。それは、当時US等で行われていた多くの教育に関わるApple社のプロジェクトからも、そう実感していました。(Tomorrow's Classroom等)
 ただ、本当にHyperCardが発表された時、それも「So Far」というデモのスタックを見た時は、本当に実感しました。「これで、子供達も表現手段が増やせる!」と。
 ちなみに、「So Far」はApple社のヒストリーを簡単にアニメと音楽を付けたスライドショーのようなものです。今となっては何という事はありませんが、当時はそんなものが本当に簡単に作れるという事に、さらに驚かされたものでした。

■HyperEDに取り組んで
 1992年の初春、ニュージーランドで行われていたプロジェクトの視察に行く事になりました。 このプロジェクトは、当時の日本を含めた環太平洋地域を統括していたApple Pacific グループが支援をしていたものでした。
 当時のニュージーランドは、PCに関わる人やソフトに関わる資源が乏しく、学校でのPC用のソフトから教材ソフトまで全てUS、UK、オーストラリアからの輸入だったようです。そこで、現場の教員からも『自分達の子供を指導する教材ソフトは自分達で』という事で、Apple社の支援を受けて小中高校の現場の先生を対象としたプロジェクトが企画されました。「教員自身がソフトを作る経験を通して、良いソフトを見極め専門家へ依頼する事ができる能力を養う」という目的で始まったのです。 1年をかけて、講議と実習さらに宿題と多くの非常に良く整備されたカリキュラムをこなしていくものでした。
 このプロジェクトもソフトは、HyperCardをベースにしていました。その操作性と創造性を阻害しないユーザーインターフェースは、このプロジェクトが実現するための必須条件であったと思います。

■教育ソフトの目指したもの/USのソフト会社との出会い
 Apple社が子供達の可能性を広げる事に邁進していた'90年の前後、ディベロッパーの中にも共感して素晴らしい製品を作る会社が多くありました。 私も、その頃までに多くの国内外のソフトを見ていましたが、デモを見て鳥肌が立ったのは初めてでした。 数学向けのシュミレーション&オーサリングソフト「Geometer's Sketchpad」、そして物理の同様のソフト「Interactive Physics」でした。 2 社の社長とも、教育のシーンでもっと楽しく、そしてこれまで理屈だけで教え込もうとしてきた事を子供達に自ら試行させ、発見させる、そういった考えで開発をされていました。 視察に伺ったサンノゼの公立高校で、皮ジャンにチェーンをぶら下げたモヒカン頭の生徒が、これらのソフトを熱心に操作している姿を見て、その少々ミスマッチ?(失礼)な光景に驚嘆したものでした。 これまでは覚えるだけから試してみる事ができるようになり、生徒達の授業への姿勢も少し変わったようでした。
 これらのソフトは、今はWinにも移植されていますが、これらの素晴らしいソフトが生まれたのは、まさにMacという素晴らしいコンセプトを持ったマシンとそれを取り巻く多くの素晴らしい人達がいたからなのだと思います。 

■PCを子供達、そして人々の手に
 Appleという集団は、私が直接クパティーノに行くようになってからの15年余りの間にも、常に変化をしてきたように思います。 迷走をした時期もありました。 しかし、今も我々に「ゆめ」を感じさせてくれる処だと感じています。
 
 改めて Mac に一言、
「これからも子供達から大人まで一人々の可能性を気付かせる、そんな志を感じさせる製品であって欲しい」と切望します。

(矢野孝一)

先日、本家,MacFanの林檎かわいやで対談した、ヤノ電器の矢野社長に御願いしました。
矢野社長のマックに対する思い入れもすごいです。脱帽ものです。またゆっくりマックな話をしましょう

(MacTreeProject)

矢野孝一


ヤノ電器 株式会社
代表取締役
http://www.yano-el.co.jp/

MacTreeProject・2003/07/15
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